静物画

《荷風》

140 × 180 mm
Pencil on Panels



宮下規久朗:諏訪さんは油彩画、いわゆる洋画で日本の神話など日本的なものを現代において描こうとしている。実はこれは、なかなか難しいことではないかと思うのです。手に骸骨を持つ女性なども描かれていますが、西洋では骸骨は知の象徴として書斎のインテリアになっており、とくに不気味な、あるいはショッキングなものだとはとらえられていない。諏訪さんの作品でもいわゆるヴァニタスとは少し違うものを感じます。
 もう一つ面白いなと思ったのは高橋由一へのオマージュとして描かれた豆腐のシリーズです。由一は西洋の画法である油彩で日本的なものを描こうとして豆腐をモチーフにしたわけですが、硬さや不器用さが漂うのは否めない。そこを諏訪さんが由一を上回る技術によって補完しているように思われます。

諏訪敦:幕末〜明治に本格的に受容されつつあった油彩画にとって、由一の貢献度は大きなものです。洋画技術とそれに付随する空間認識は当時、芸術性云々以前に文明国であれば当然携えているべき技術であったし、庶民にとっては未経験のビジュアルショックで、事実、見世物でもありました。世の中にある多様な物体の質感をここまで再現できるというバリエーションを示す必要があったのだと思います。それには誰でも見た経験のある、豆腐のような卑近なモチーフが最適でした。現代人から見ると、プリミティブな面白さがある絵です。たどたどしくも目で触ることができるかのような質感は情念を放つかのようです。
(別冊太陽「写実絵画のミューズたち」宮下規久朗氏との対談より抜粋)


《水を注ぎ、満たし、冷やす》
Pour Water, Fill Up, and Let Chill

325 × 453 × 25 mm
Oil on Canvas



《不在》
Absence

325 × 453 × 25 mm
Oil on Canvas



《東と西》
East and West

325 × 453 × 25 mm
Oil on Canvas